理事長所信

【不安と期待と現実と】

私たちを取り巻く環境は絶え間なく変化を続け、いつの時代もそれに適応することで生き抜いてきました。例えば敗戦を経験することで新しい「日本」の形成が加速しました。全てを無に返すような大災害が起こるたびに奮起し発災に耐え得る強くしなやかなまちが再建されました。時の人々が惰性に身を任せ進退を他に委ねることを選んでいたならば、違う「いま」が存在したでしょう。

社会を担う責任世代である私たちや大切な親や子がこれから生きていく時代はさらに過酷で先が読み難いであろうことは誰もが危惧するところですが、決定的に解決する策は国すら模索の範疇を超えぬ「いま」だからこそ、言い換えれば「望む未来」の創造は自らの信念や行動によって実現可能であり、生みの苦しみに耐える覚悟を持ち課題解決に向け果敢に挑む姿勢を示し行動し続けることで「明るく活き活きと生きることのできるまち」を未来の現実にできると信じています

【信頼できる仲間との協働と組織】

私は鹿屋青年会議所に関わる全ての人々を「チーム」と呼びます。所属するメンバーは当然ですが、日々の活動を支えてくれる家族や会社のスタッフも大事な一員ですし、知恵や叱咤を与えてくれる鹿屋JCシニアクラブの先輩方も心から信頼できる一員です。運動の意義に共感し課題解決のために尽力してくれる行政や各種団体、そして同世代で構成される若手団体も苦楽を分かち合えるチームであると考えています。鹿屋青年会議所だからこそ取り組める課題や具体的な解決方法を共有し「まちの未来」のためにガッチリとスクラムを組みましょう。本当に個団体で挑み目的を達成できるか?それほど時代は苦境に立たされています。

理事長は「旗振り役」だと言われますが私は少し違う見方をします。種々様々な背景を持つ仲間が折り重なり色鮮やかだけれど少々歪で力強いその旗をど真ん中で支えることを役割として、旗はメンバーの個性の集合体でありそれを大きく左右に振るのもメンバーであってほしいと思います。

青年会議所では「委員会」を構成し、地域課題の解決に向けてそれぞれの事業・運動を牽引しますが、あくまで鹿屋青年会議所を代表して計画するのであって最大限の効果を得るためには全会員で取り組まなければ到底達成出来ないものばかりです。ましてや地域住民や関係諸団体とのパートナーシップの意識を高め公益的な展開を図る必要を考えると鹿屋青年会議所会員間の結束はとても大事な要素です。いくら強力な武器を得ても使う私たちにその資質と能力がなければ何にもならないからです。職種や立場や生立ちに限定されないメンバーが集まっている私たちのポテンシャルは想像するだけでわくわくするものですので、それを十分に引き出し一つに合わせることに重点を置いて組織運営を行います。後ろ向きの力すらも全て前向きな力に変える原動力に成り得る存在が「青年」であり、青年会議所運動に誇りを持ち皆で力を合わせて明日を動かそう

【まちをつくるとは】

全ての人に生まれ故郷はありますが、自信を持って一生涯このまちで生き続けたいと思えている人はどれほどいるだろうか。働き手が減り消費活動は停滞し、子供の健全な成長に期待できず高齢者が安心して過ごせる環境が整わないようなまちに明るい未来があるだろうか。このまちが他と比べて別段劣っているという話ではなく日本中が現に直面している非常に大きな問題です。地域ごとの人口構成予想ピラミッドの類のデータを多く目にすると思いますが、指をくわえ何もせず傍観していると高い確率で現実になりますし、躊躇していると手遅れになります。大切な心の拠り所である故郷がそれでよしと思える人はおそらく少数ですが、傍観者や無関心者も少なくないでしょう。私たちがしなければならない「まちづくり」とは何なのかを改めて考え、調査と分析を重ねることで絵空ことではない明るいまちを創造しましょう。

私たちが住み暮らすおおすみの地は当然の様に恩恵を与えてくれますが、十分な利活用ができているとはまだまだ言えないですし、他から見ると優れた資源であるにも関わらず認識すら不十分であることも否めません。周知イベントをするのもいいでしょうし交流人口増加を目的とした集客イベントを実施しても構いません。しかし重要なのは住民が地域課題を認識しともに手を携えて自ら行動を起こすことが持続可能なまちの発展へと繋がるという体験をすることであると考えています。私たち自身が楽しみながら率先して取組む姿はきっとまちに希望と期待を与えます。いまこそまちづくりのトップランナーとなりまちの明日を動かそう

【「お知らせ」は卒業しよう】

私たち青年会議所はご承知の通り「まちのため」に運動を展開してきましたし、今後も運動を展開し続けます。しかし青年会議所そのものに興味を持っていただくことはそれほど重要ではなく、しかも運動の効果に直接的には繋がり難いと考えています。大切なのは必要としている方々もしくは必要になるであろう方々に如何に有益な情報を提供できるか、その情報を基に行動を起こすことで何がどう動くかを体感していただくことだと思います。おおよその情報は誰でもいつでも入手可能となり、住民自らの意思で自由に発信できる時代の到来が私たちを含めた一住民にとって様々なチャンスになることを理解し、この機会をどのように活用することが最大効果を生むのかを改めて考える必要があります。いち早く自己満足の「情報発信」を脱し、互いに益を感じることのできる次代の情報共有ツールの活用術を示し明日を動かそう81

【これからの地域産業のために】

2019年度は地域産業における先端技術の活用や先進の取り組みをすでに行っている企業がこれまでの経緯やこの先どのような未来を描けているかを周知することに取り組みました。地域産業の抱える問題はそのまま地域の存続に関わる非常に大きな問題ですが、早急な解決の必要に迫られているにも関わらず着手することが難しい側面があります。例えば日々の忙しい業務の中で新しいことに取り組む時間的また思考的余裕はあまりないですし、今現在は問題を抱えながらでもどうにか業務が成り立っているということも背景にあります。しかし、必然としてその時はやってきますが、よほどの楽観主義者でない限り誰でも実感しているにも関わらず着手できていない企業は多く存在するでしょう。そこで「取り組んだら出来た」という実感と評価が必要であると考えました。鹿屋青年会議所には溢れる熱意と責任感を持った企業人が多く在籍していますので皆で知恵を出し合い「先進的発想の実装モデル」の創出に取り組みます。しっかりと方々にアンテナを張り実益を生むモデル創出を実現し地域産業が抱える問題解決への糸口を示すことで明日を動かそう

【未来を明るく照らす存在・子供たち】

私にも大切な子供がいます。

令和の新時代でも学校教育の本質は勉学と集団社会への適応ですが、移りゆく環境の中で少しずつ変化しており、人間性や国際性、挑戦や健康など「集団の中の個」を大切にする兆しがあります。一方で親の役割はいつの時代も変わることなく「責任」を持つことです。抽象的に聞こえるかもしれませんが私はその一択だと考えています。これから様々な経験を通して成長する子供たちにどのような機会を与え、親としてともに成長できるかがおおすみの未来にも大きく影響することですし、子供たちの笑顔は私たち大人にとって未来への明るい希望ではないでしょうか。どんな社会環境下にあっても子供たちが元気いっぱい遊びまわり、時間を忘れるほど何かに熱中し、日々起こったことを語らい笑い合える地域はそれだけで十分に存在意義があると思います。

しかしながら一例を挙げれば世の中に「ワークライフバランス」という思想が必要なほど世間は忙しくしているにも関わらず鹿児島県の子供の貧困率は常にワースト上位に位置付けられています。また、「便利な道具」であるスマートフォンの普及により「ながら仕事」などの行為が日常的な習慣になりつつある昨今の副産物として、親子間の会話の頻度や理解度が低下する傾向にあります。夢や希望を抱きながらすくすくと成長する姿を願い、最良の理解者であり且つ応援者であるべき私たち大人がそれを阻害しているのもまた事実です。

「環境が人を育てる」とはよく言いますが、生活や生きがいのための「仕事」と子供のための「教育」、どちらも疎かにせずかけがえのない存在である子供たちに心身ともに健全な成長を促し、子供たちの笑顔を増やすことでおおすみの明日を動かそう

【SDGs=チャンスではなく必然】

2015年9月に国連の「持続可能な開発サミット」で採択され、2016年から2030年までの推進期間15年間のうち、すでに3分の1が経過している「持続可能な開発目標(SDGs)」は日本社会にも随分と浸透してきました。前身の「ミレニアム開発目標(MDGs)」は新興国が途上国を資金や技術でサポートをするという特性が強く、双方がバランスよく発展することを目標としたものでした。一方、SDGsは採択されるまでのプロセスで3年を費やし、世界中の幅広い分野1,000万人から意見を集め協議を重ねることで「みんなのための・みんなで支える世界レベルの社会契約」として存在することから、国、行政、地方自治体、企業、コミュニティー、個人(大人や子供)といったあらゆるレベルで取り組むことが可能で且つ強く求められています。今後あらゆる分野(特に地方自治体と企業)において「評価」が発生する場合、SDGsへ取り組む姿勢を示す=加点ではなく、示せない=減点対象と見られる可能性が高まっていることからも、様々な事柄を思い描く傍らには17個の目標のどれに関わるものなのか意識を張り巡らせることが当然の社会となりつつあるわけですから、自身の社業はもちろん、青年会議所の事業・運動においても積極的に当事者意識を持って取り組むことで持続可能な地域社会の明日を動かそう

【最後に】

鹿屋青年会議所は56年間の歴史を積み上げてきました。これまで絶えず地域の課題に目を向け真剣に取り組み続けることでいまの故郷おおすみがあるのだと私は自負しています。役目を果たし卒会された先輩方が当時どれほど有限の資源を費やしてきたのかと思うと頭が上がりません。私が尊敬する人の多くは両親を除けば青年会議所関係者であることも不思議ではないと思えます。それは、その瞬間ともに汗を流していなくとも実績や引き継がれる意志から十分に感じ取れるものだからです。

今この瞬間は明日には過去になり2020年度の運動も翌年には57年間の1年にすぎません。だからこそ若者らしく胸を張って臆することなく堂々と鹿屋青年会議所の運動に取り組むことを決意し公益社団法人鹿屋青年会議所第57代理事長の所信とさせて頂きます